香港デモ:「民主化」でも変わらない特異な「不動産本位制」支配構造

執筆者:樋泉克夫 2014年10月2日
エリア: 北米 アジア
 デモはかつてないほどに規模が膨れあがっている (C)EPA=時事
デモはかつてないほどに規模が膨れあがっている (C)EPA=時事

 香港の命である国際金融のハブ機能が集中する中環(セントラル)地区を占拠し、経済活動の根幹をマヒさせることで中央政府に打撃を与えようという「占中」運動は、民主派が呼び掛けていた10月1日の国慶節をまたずに決行された。今回の前倒し決行は事前に定められていたことなのか。それとも学生らの盛りあがりの過程で突発的に起きてしまったことなのか。後者だとするなら、一時的なガス抜きで終わる可能性も否定できない。

 

“金の卵を産み続ける鶏”

 学生らは香港特別行政区政府トップである梁振英行政長官(以下、長官)との直接対話を求めているが、香港問題の最終決定権を握っているのは北京の共産党中央政府である。であればこそ、アメリカ政府や台湾の馬英九総統が示した今回の運動への強い支持を背景に長官との対話を実現させたところで、学生らが求めるような「民主化」の方向が打ち出されることはないはずだ。これが、1国2制度の下で特別行政区としての香港に与えられた「高度な自治」の実態ということになる。

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執筆者プロフィール
樋泉克夫(ひいずみかつお) 愛知県立大学名誉教授。1947年生れ。香港中文大学新亜研究所、中央大学大学院博士課程を経て、外務省専門調査員として在タイ日本大使館勤務(83―85年、88―92年)。98年から愛知県立大学教授を務め、2011年から2017年4月まで愛知大学教授。『「死体」が語る中国文化』(新潮選書)のほか、華僑・華人論、京劇史に関する著書・論文多数。
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