インド自動車各社の海外展開が急加速

 インドの自動車業界が急速に海外展開を進めている。回復の兆しが見えてきたとはいえ、2ケタ成長を続けてきた国内販売が低迷している上、メーカー各社による新モデル投入や値引き合戦などが業界全体の利益を圧迫していることが主な背景だ。これまで海外事業がきわめて限定的だった各社は、南アジア近隣諸国や中東・アフリカ、果ては中南米にまで相次ぎ販路を拡大、新工場建設による現地生産の動きも本格化しつつある。

 

「タタ」が開いた国際化の道筋

 国際化において先頭を走ってきたのは、なんと言ってもタタ自動車だろう。大宇商用車やスペインのバスメーカー、ヒスパノ・カロセラに続き、2008年には英ジャガー・ランドローバー(JLR)を23億ドルで買収し、世界をあっと言わせたのは記憶に新しい。タタは南アフリカやバングラデシュ、ミャンマーなどでトラックなどの商用車を生産しているが、13年末には傘下のJLRがブラジル・リオデジャネイロ州と工場建設で正式調印した。工場の投資額は3.9億ドル、2016年稼働開始し、年産2万4000台を目指している。また14年3月にはサウジアラビアでの組み立て工場建設を表明した。こちらの投資額は1億ポンド(約174億円)、年産10万台を生産する予定だ。このほか、タタはナイジェリアやケニアなどアフリカ主要国での商用車生産も計画中。超低価格車「ナノ」のスリランカ、ネパール向け輸出開始(2011年)や、インドネシアでの現地法人設立(12年)などに続き、14年4月にはフィリピンでの乗用車販売も開始している。

カテゴリ: 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
緒方麻也(おがたまや) ジャーナリスト。4年間のインド駐在を含め、20年にわたってインド・パキスタンや南アジアの政治・経済の最前線を取材、分析している。「新興国において、経済成長こそがより多くの人を幸福にできる」というのが信条。
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