バルト3国が苦慮する「ロシアの挑発」

執筆者:国末憲人 2014年10月28日
エリア: ヨーロッパ

 ウクライナ東部ドンバス地方で続いていたウクライナ正規軍と親ロシア勢力との紛争は、どうやら親ロ勢力の勝利で終わるようだ。8月まで、鉄砲を撃ち合うような戦闘で正規軍が優位だったが、近代装備を備えたロシア軍の大規模な介入で戦況は一気にひっくり返った。欧米は経済制裁で対抗しているものの、勢力圏の確保に全力を挙げるロシアを制止するには至らなかった。

 親ロ勢力への住民の支持は薄く、特に医療や社会保障面でまともな統治ができそうにない。支配地域ではこれからも混乱が続くだろう。

 一方、軍事的には、クリミア半島からドンバスへと手を伸ばしたロシアが、着実に成果を上げたように見える。そこから、「ロシアが次を狙っているのでは」との不安も生まれている。特に強い懸念を抱いているのが、バルト3国だ。

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執筆者プロフィール
国末憲人(くにすえのりと) 東京大学先端科学技術研究センター特任教授 1963年岡山県生まれ。85年大阪大学卒業。87年パリ第2大学新聞研究所を中退し朝日新聞社に入社。パリ支局長、論説委員、GLOBE編集長、朝日新聞ヨーロッパ総局長などを歴任した。2024年1月より現職。著書に『ロシア・ウクライナ戦争 近景と遠景』(岩波書店)、『ポピュリズム化する世界』(プレジデント社)、『自爆テロリストの正体』『サルコジ』『ミシュラン 三つ星と世界戦略』(いずれも新潮社)、『イラク戦争の深淵』『ポピュリズムに蝕まれるフランス』『巨大「実験国家」EUは生き残れるのか?』(いずれも草思社)、『ユネスコ「無形文化遺産」』(平凡社)、『テロリストの誕生 イスラム過激派テロの虚像と実像』(草思社)など多数。
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