お気に召して6億円も当然 シェイクスピア最初の戯曲集

執筆者:関亜矢子 2006年11月号
カテゴリ: 文化・歴史

 夫、マクベス王にダンカン王の殺害を促した後、罪悪感から自分の手が血に染まった夢を見て、必死に手を洗うマクベス夫人――この場面は、創作から四百年を経た現在読んでも強い印象を残す。だが、この『マクベス』を含め、『お気に召すまま』『あらし』など、ウィリアム・シェイクスピアを代表する十八の劇は、友人であったジョン・へミングらがシェイクスピアの死後、最初の戯曲全集『ファースト・フォリオ』として出版していなければ、永久に失われていた。「フォリオ」とは、「二つ折り本」という意味で、初版は七百五十部印刷されたが、現存するのは二百五十部ほどだという。 この『ファースト・フォリオ』の完本が、今年七月にロンドンのオークション会社サザビーズで、二百八十万英ポンド(約五億九千万円)で落札された。「本一冊が六億近くも!」と驚かれるかもしれないが、これにはいくつかの理由がある。『ファースト・フォリオ』は、ジェームズ一世の聖書と並んでイギリス書籍の中で最も価値があり、イギリス文化に最大級の影響をもたらしてきたと、サザビーズのイギリス書籍の専門家ピーター・セリー氏は語る。 存命中、シェイクスピアは盗作を防ぐため自作の劇を印刷しなかった。役者には、劇場の担当者が手書きした台本が渡された。手書きの台本はほとんど残っておらず、友人の努力がなければ、十八の劇は現在に伝わっていなかったかもしれない。

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