クオ・ヴァディス きみはどこへいくのか?
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エボラと黒死病

徳岡孝夫
執筆者:徳岡孝夫 2014年11月5日
エリア: アフリカ

 選挙区の夏祭りに団扇を配った女大臣は許し難いと、大声を上げておられた方々。また選挙区の皆様を明治座への観劇旅行に世話した女大臣はケシカランと叫んでおられた人々。そういう正義派は、つい先だってのことをお忘れになったのかなあ。

 古い話ではない。毎月お母様から「子分も増えたことだろうから」と、欠かさず1500万円のお小遣いが届いたことを。それがバレたとき「本当です。ちっとも知らなかった」と真面目な顔で弁解なさった方がいらしたことを。その方を党首に戴いておられたことを。

 

 人間には不思議な癖がある。生死にかかわる大病なのに、指の疵の方を痛がる人がいる。

 スペインはマドリード市の病院に勤める看護助手テレサ・ロメロさんはエボラ出血熱のウイルスを持つ患者を看護していて感染し、彼女も彼女の夫も隔離された。ところが騒ぎは、夫婦の飼い犬エクスカリバーを巻き込んで炎上した。人は飼い犬を抱くし、愛犬に口移しでクッキーを与える人もいる。

 スペインの保健衛生当局は、迷わず犬の殺処分を決めた。これが火を煽った。

 デモ隊が犬の隔離されている施設を囲み、犬の助命を要求する40万通のメールが世界各地から殺到した。エボラの恐怖は、犬1匹の命の前に、しばし忘れられた。

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執筆者プロフィール
徳岡孝夫
徳岡孝夫 1930年大阪府生れ。京都大学文学部卒。毎日新聞社に入り、大阪本社社会部、サンデー毎日、英文毎日記者を務める。ベトナム戦争中には東南アジア特派員。1985年、学芸部編集委員を最後に退社、フリーに。主著に『五衰の人―三島由紀夫私記―』(第10回新潮学芸賞受賞)、『妻の肖像』『「民主主義」を疑え!』。訳書に、A・トフラー『第三の波』、D・キーン『日本文学史』など。86年に菊池寛賞受賞。
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