重しのとれたNTTが「上位レイヤー」を貪り始めた

執筆者:本田真澄 2006年12月号
カテゴリ: 経済・ビジネス

「竹中(平蔵前総務相)がいなくなったのをいいことに、NTTは放送市場に攻め込んだな」 CS(通信衛星)放送の「スカイパーフェクト・コミュニケーションズ(スカパー)」と衛星運営大手「JSAT」の経営統合が発表された十月末、総務省のある幹部はそう解説した。二〇〇〇年頃から先延ばしにされ続けた統合計画を舞台裏で仕上げたのはNTTコミュニケーションズ(NTTコム)だった。 CS事業は、番組制作会社、衛星運営会社、そしてその橋渡しをするスカパーのようなプラットフォーム会社の三層からなる。その大手同士の統合について、竹中氏が主導した『放送と通信の融合に関する懇談会』は「事業の寡占化」を問題視。さらに、所管する総務省幹部も「新会社へのNTTグループの影響力が強くなり過ぎる」と反対していた。スカパーの株主の中でも、これまで主導権を握ってきたフジテレビは統合に最後まで難色を示したと言われる。しかし、JSATとスカパー両社の大株主である伊藤忠商事を味方に引き込んだNTTコムは、複数の反対論を強引に押し切った。 強気の背景には、政権交代があった。NTTグループに対して執拗にグループ解体論やドミナント(市場支配的事業者)規制強化を仕掛けた竹中氏は、一方で、ソフトバンクなど新興企業の参入を歓迎した。その竹中氏が小泉政権の幕引きとともに永田町を去ると、安倍内閣の首相補佐官(広報担当)にNTT出身の世耕弘成参院議員が就任。竹中氏の後任の菅義偉総務相が、和田紀夫NTT社長を自らの肝煎りで作った懇談会の構成員に指名したのも、「NTTが中期経営計画で掲げる『二〇一〇年までに全国三千万世帯に光ファイバー網を敷設』を後押しし、それを安倍政権の掲げるテレワークの拡大やブロードバンド普及促進による地域格差是正に使おうということ」(政府関係者)とも目されている。

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