ロシア「サウスストリーム」中止の衝撃:新局面のエネルギー地政学

佐藤伸行
執筆者:佐藤伸行 2014年12月9日
エリア: ヨーロッパ ロシア

「ブルガリアはパイプライン建設中止で取り損ねた通過料4億ユーロをブリュッセルに請求すればいい」

 プーチン露大統領はこんな捨て台詞とともに、ロシア天然ガスをバルカン経由で欧州に送り込む長大なパイプライン「サウスストリーム」計画の中止を発表した。今回の突然の発表については、欧州委員会の一貫した反対姿勢がついにロシア側の屈服を促したと分析し、「ロシアの戦略上の失敗」(フィナンシャル・タイムズ)と位置付ける論調も少なくない。一方でロシアは「トルコ版サウスストリーム」建設計画を打ち出しており、ロシアと欧州のエネルギー地政学は新たな局面に移行しつつあると言っていい。

 

翻弄されるブルガリア

 プーチンの中止発表をめぐっては、「欧州委員会と米国の圧力の下でサウスストリーム着工を凍結したブルガリア」に対する「脅し」であり、プーチンは本気で中止を決断したわけではないという見方もくすぶっている。

 しかし、原油安局面を迎えた中、巨額の建設コストはロシアに大きな負担となってのしかかってきている。欧州のガス需要の低下も予想され、ガスプロムは別途の販路開拓に乗り出す必要に迫られていた。「ブルガリア・ルート」に見切りを付け、「トルコ・ルート」に“転進”したわけであり、単なる脅迫ではないことは明らかだ。

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執筆者プロフィール
佐藤伸行
佐藤伸行 追手門学院大学経済学部教授。1960年山形県生れ。85年早稲田大学卒業後、時事通信社入社。90年代はハンブルク支局、ベルリン支局でドイツ統一プロセスとその後のドイツ情勢をカバー。98年から2003年までウィーン支局で旧ユーゴスラビア民族紛争など東欧問題を取材した。06年から09年までワシントン支局勤務を経て編集委員を務め退職。15年より現職。著書に『世界最強の女帝 メルケルの謎』(文春新書)。
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