インテリジェンス・ナウ
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ロシアより愛をこめて「邪魔者」に届くポロニウム

春名幹男
執筆者:春名幹男 2007年1月号
カテゴリ: 国際
エリア: ヨーロッパ ロシア

 ロンドンで、ポロニウム210という放射性物質により「毒殺」されたロシア情報機関、連邦保安局(FSB)の元中佐アレクサンドル・リトビネンコ氏。 彼はプーチン大統領をターゲットにしていた。両者はお互いを敵視し、戦ってきた。 リトビネンコ氏は、死の四十八時間前、全文二十三行の「声明」を口述筆記させ、自ら署名した。その中で彼は、プーチン大統領を名指しし「あなたは私を黙らせることに成功するかもしれないが、あなたの残りの人生、世界中からの抗議の怒号が耳に響くだろう」と「大統領の犯罪」を告発した。 プーチン氏との戦いの第一弾は、一九九八年十一月十七日。現役FSB中佐だったリトビネンコ氏は覆面をした仲間のFSB工作員とともにモスクワで記者会見し、「ロシアの政商ベレゾフスキー氏の暗殺を上司から命じられた」と暴露した。当時FSB長官はプーチン氏だった。 英国に亡命後の二〇〇二年、リトビネンコ氏は共著で出版した『ロシア爆破』で、九九年のモスクワのアパート連続爆破テロは「FSBの謀略」と告発した。当時首相のプーチン大統領は、爆破テロをチェチェン武装勢力の犯行と断定、それを口実にチェチェン第二次進攻に踏み切り、人気を上げ、二〇〇〇年の大統領選に勝利した。

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執筆者プロフィール
春名幹男
春名幹男 1946年京都市生れ。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒業。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授を経て、現在、早稲田大学客員教授。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『スパイはなんでも知っている』(新潮社)などがある。
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