饗宴外交の舞台裏
饗宴外交の舞台裏(108)

米露が密かに取り引きしたトランジットの“朝食外交”

西川恵
執筆者:西川恵 2007年1月号
カテゴリ: 国際
エリア: ロシア 北米

 ブッシュ米大統領夫妻を乗せた専用機エアフォースワンは、十一月十五日、ベトナムのハノイで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)に向かう途中、モスクワのブヌコボ空港に給油で立ち寄った。わずか一時間十五分だったが、モスクワ空港でプーチン・ロシア大統領夫妻の丁重なもてなしを受けた。 当初、米大統領夫妻は機内から出る予定はなく、米側は「特別のプロトコール(儀典)は必要ない。軽食だけ差し入れてほしい」とロシア側に申し入れ、ロシア風パンケーキ「ブリニ」に、キャビアやイクラ、サワークリームを挟んだものを注文していた。 しかし米大統領夫妻の出発数日前、プーチン大統領が国際電話で「空港で一緒に食事をしませんか」と誘い、短時間、空港の貴賓室で会うことが決まった。米側スポークスマンは「夫妻で親交を温めるのが目的」と発表。ロシア側も「特定の議題は設定されてない」と、あくまで非公式なものと強調した。 米大統領専用機がブヌコボ空港に到着したのは十五日午後二時半すぎ。タラップの下でプーチン大統領夫妻が待ちうけ、ローラ夫人にプーチン大統領が花束を手渡し、親愛の情を示す四回のキスを両頬にした。 両大統領夫妻が会うのは七月のサンクトペテルブルクの主要国首脳会議(サミット)以来。貴賓室に案内された米大統領夫妻に、山のような料理が用意されていた。

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執筆者プロフィール
西川恵
西川恵 毎日新聞客員編集委員。1947年長崎県生れ。テヘラン、パリ、ローマの各支局長、外信部長、論説委員を経て、今年3月まで専門編集委員。著書に『エリゼ宮の食卓』(新潮社、サントリー学芸賞)、本誌連載から生れた『ワインと外交』(新潮新書)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、訳書に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店、共訳)などがある。2009年、フランス国家功労勲章シュヴァリエ受章。本誌連載に加筆した最新刊『饗宴外交 ワインと料理で世界はまわる』(世界文化社)が発売中。
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