恐怖政治におののき、若い記者も口をつぐむ。かつてあれほどレベルの高かったロシアのメディアは、いま衰亡の危機に立っている。 旧ソ連時代末期、西側のモスクワ駐在記者にとって水曜日は多忙な一日だった。通常の新聞に加え、改革派のモスクワ・ニュース、アガニョーク、文学新聞といった週刊紙・誌の発行日に当たり、夕方まで新聞、雑誌の転電に追われたものだ。長文の調査報道の信頼性や水準は欧米メディアを圧倒していた。 当時はグラスノスチ(情報公開)の全盛期。新聞・雑誌には、ソ連史の暗部を暴露したり、ソ連の立ち遅れを実証したり、ゴルバチョフとエリツィンの暗闘の舞台裏を活写したり、特ダネ満載だった。
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