船をつくれる人材がいなくなる前に――造船ニッポン「最強から最高へ」の転舵 5

執筆者:船木春仁 2007年2月号
カテゴリ: 経済・ビジネス

「良い機会だから、このビデオを見ていきませんか」と誘ってくれたのは、東日本造船技能研修センター運営協議会事務局長の鈴木英機だった。研修センターは、横浜市のJR根岸線新杉田駅前、東京湾岸に巨大なドックを抱えるアイ・エイチ・アイマリンユナイテッド(IHIMU)横浜工場の一角にある。朝の体操を見ることから始まった取材が一段落し、事務室で研修生と一緒に昼食の仕出し弁当を食べているときのことだった。 ビデオは、NHKのドキュメンタリー番組『プロジェクトX』で制作された『世界最大の船 火花散る闘い』だった。一九六六年に、出光興産が発注して石川島播磨重工業(IHI)が建造した世界最大(当時)のタンカーである「出光丸」の計画段階から完成までの過程を追っている。出光丸は、日本が造船大国の道を歩み始めるきっかけとなった船である。 プロジェクトには、鈴木もかかわっていた。鹿児島県の漁師の子に生まれ、一九六二年に旧IHIに入社してからは一貫して溶接工として働いてきた。鋼板の材質と溶接棒材料の相性、材料ごとに違う電流や電圧の負荷のかけ方などを知り抜いている「匠」だ。 出光丸の船体には、新日本製鉄が開発し、その後の同社の高付加価値路線の源となる高強度鋼板「ハイテン」が使われた。その炭素組成が従来の鉄板とは異なるために溶接がうまくゆかず溶接部分を境に折れるのを、いかに克服していったかが、ドキュメンタリーのハイライトにもなっている。

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