カジノを「隔離」する無菌国家シンガポールのジレンマ

執筆者:山田敏弘 2007年2月号
カテゴリ: 国際 金融

[シンガポール発]昨年十二月八日、シンガポール政府は、国内二つ目となるカジノリゾートの開発権をマレーシアのカジノ運営大手「ゲンティン・インターナショナル」が獲得したと発表した。ゲンティングループを率いるのはアジア屈指の華僑である林梧桐。マレーシアで唯一のカジノを運営する同社は、第一弾の入札で敗れたものの第二弾の落札でアジアに新たな橋頭堡を得た。建設費約五十二億シンガポール・ドル(=SD・約四千億円)をつぎこみ、二〇一〇年にはシンガポール南部の観光地セントーサ島に「ユニバーサル・スタジオ」や六つのホテルなどを含む総合リゾート施設を誕生させる。 これにより、シンガポールのカジノ誘致計画(全二件)は二年越しに一応の決着をみた。〇六年五月に米カジノ大手「ラスベガス・サンズ」が開発権を獲得した第一弾は、金融街近くのマリーナ・ベイですでに建設工事が進められている。 シンガポールでは過去にも数回カジノ建設案が浮上したものの、いずれも実現しなかった。〇二年の経済審理委員会で検討された際には、リー・シェンロン財務相(現首相)自ら、「(シンガポール国民に)ギャンブル依存症が増えるリスクがある。また、組織犯罪やマネーロンダリングにつながる」と主張。建設を見送った背景には、カジノに集まるカネが「蟻の一穴」となり、一九六五年の建国以来続く人民行動党(PAP)による統制社会が崩壊しかねないという警戒感があった。

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