【ブックハンティング】通貨として光り輝いていた「円」の青春グラフィティ

吉崎達彦
執筆者:吉崎達彦 2007年3月号

 円安が進んでいる。実効レートで行くと、一九八五年のプラザ合意直前の水準であるというから驚く。輸出企業にとってはまことに結構なことであるし、今回の景気回復局面を持続させるためにも、当面は円安さまさまといったところであろう。 しかるに現在の日本経済は、経常黒字は拡大基調にあり、特段にファンダメンタルズが悪いわけではない。なぜ円安が進むかといえば、強いて言えば、通貨としての円の魅力のなさが原因である。 中国の飛躍的な貿易量拡大に伴って、貿易決済通貨としての円の比率が相対的に低下している。対日直接投資もあいかわらず低調だ。そして財政赤字の巨大さや日銀の力量への疑問もあいまって、「利上げできない通貨」の存在感は薄まる一方だ。 しかし二十年前には、円が文字通り光り輝いていた時期があった。『日米通貨交渉』は、その一九八〇年代における円の歴史を追った労作である。 通貨の歴史は、通貨マフィアと呼ばれるごく一握りの人々によって担われている。下手をすれば歴史に残ることなく消えてゆく。それを、当時の第一次資料や証言を元に、歴史の再構築を目指したのが本書である。例えば内海孚・元財務官が駐米日本大使館の公使であった時代の「応接録」には、レーガン政権当時の対日交渉の内部事情が生き生きと描かれている。

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執筆者プロフィール
吉崎達彦
吉崎達彦 双日総合研究所チーフエコノミスト。1960年(昭和35年)富山市生まれ。一橋大学社会学部卒業後、1984年日商岩井(現双日)に入社。米国ブルッキングス研究所客員研究員、経済同友会調査役などを経て現職。新聞・経済誌・週刊誌等への執筆の他、「サンデープロジェクト」等TVでも活躍。また、自身のホームページ「溜池通信」では、アメリカを中心に世界の政治経済について鋭く分析したレポートを配信中。著書に『溜池通信 いかにもこれが経済』(日本経済新聞出版社)、『1985年』(新潮新書)など、共著に『ヤバい日本経済』(東洋経済新報社)がある。
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