80時間世界一周
80時間世界一周(31)

アラビア海の主役「ダウ船」を容赦なく狙う海賊の脅威

竹田いさみ
執筆者:竹田いさみ 2007年3月号
カテゴリ: 国際
エリア: 中東

 三角帆をたたんだ一隻の木造帆船「ダウ」が、ゆっくりとアラビア湾から入港してきた。ここはアラブ首長国連邦の国際貿易都市ドバイ。意表をつくデザインの高層ビルが林立する旧市街の真ん中に、昔ながらのダウ船が出入りする港がある。英国系インターコンチネンタルホテルの真正面なので、迷うことはない。現代と中世が同居する何とも不思議な都市、それがドバイだ。貴金属店が並ぶゴールド・スーク(市場)に近接して、ドバイ・クリーク(運河)が市内を分断する。 このクリークを眺めていると、ダウ船を通じて日用雑貨や貴金属、ナツメヤシや香辛料、電気製品からオートバイ、さらに小型自動車にいたるまで、ありとあらゆるモノの交易がなされているのがわかる。最近では「ダウ」のかわりに「サンブーク」という呼称が一般的だという。 旧市街ではダウ船が接岸できる港が限られており、何隻ものダウ船が荷揚げ作業の順番を待っている。見たところ、ドバイ・クリークでは動植物検疫は皆無、税関や警察官の姿もない。日本や欧米では、テロ対策が強化されたため、国際貿易港に許可なくして足を踏み入れることはおろか、岸壁で魚釣りも禁止されるご時世なのに、である。日本人の目から見ると、密輸の現場とさして変わらない有様だ。

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執筆者プロフィール
竹田いさみ
竹田いさみ 獨協大学外国語学部教授。1952年生れ。上智大学大学院国際関係論専攻修了。シドニー大学・ロンドン大学留学。Ph.D.(国際政治史)取得。著書に『移民・難民・援助の政治学』(勁草書房、アジア・太平洋賞受賞)、『物語 オーストラリアの歴史』(中公新書)、『国際テロネットワーク』(講談社現代新書)、『世界史をつくった海賊』(ちくま新書)、『世界を動かす海賊』(ちくま新書)など。
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