【日本が直面するエネルギー大地殻変動】 LNGマーケットの流動化が始まった

執筆者:五十嵐卓 2007年4月号
エリア: 日本

 ロシア・サハリン北東部大陸棚で英蘭系石油メジャー、ロイヤル・ダッチ・シェルと三井物産、三菱商事が進めてきた天然ガス・石油開発の大規模プロジェクト「サハリン2」。天然ガスを液化して顧客に供給するLNGプロジェクトだ。サハリン2は昨年秋、突然、ロシア天然資源省から環境破壊で工事差し止めに遭った。環境保全で一部問題があったのは事実だが、工事差し止めはあまりに極端な対応だった。背景にあったのは「プーチン大統領の意向を酌んで先走りする役人の功名心」(ロシアウオッチャー)。そして昨年末、サハリン2は再びプロジェクト頓挫の瀬戸際に立たされ、世界のエネルギー関係者の耳目を集めた。ロシアの政府系エネルギー会社、ガスプロムがサハリン2の株式の「五〇%+一株」をシェルなど三社から譲渡される契約がまとまったからだ。 シェルをはじめ三社が様々な苦難を乗り越えながら二〇〇八年秋の供給開始にあと一歩までこぎ着けた事業をロシア政府が横取りした形になったため、日本の世論から「ロシアの資源ナショナリズム」「プーチン政権の横暴」と強烈な批判を浴びた。 だが、株式の売り手となった三社からは不満の声はあっても怨嗟というまでの声はあがっていない。ガスプロムが対価として支払った金額が約七十五億ドルと「プロジェクト評価としては妥当な金額」(アナリスト)だったからだ。何より「プロジェクトの根幹となる生産物分与協定(PSA)の破棄という最悪の事態を回避できたことは外資にとって大きな成果だった」と日本のエネルギー会社幹部は指摘する。三井物産、三菱商事などは今回の株譲渡で十分に元がとれたといわれる。むしろ「ガスプロムとビジネス上の関係を構築できたことは将来にとってプラスだった」という両社の幹部もいる。

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