病気を治すのは「いのちの力」
病気を治すのは「いのちの力」(15)

東大医学部で繰り広げられる「講座の縄張り争い」

執筆者:髙本眞一 2015年3月7日
カテゴリ: 医療

 ほとんどの旧国立大学には、たいてい寄付講座というものがあります。正規の講座とは別に、企業や行政から寄付を受けてつくられる講座のことを言います。
 特に理系の場合には、学問がどんどん進歩して先端研究などを正規の講座でカバーするのが困難になってきており、近年、寄付講座の設立が多くなっています。

 大学は、独立行政法人化以降、資金のやり繰りには厳しいものがあり、新たな学問領域の研究を企業の寄付金によって実施できるので、寄付講座を大歓迎します。企業も、その成果が実るのは遠い将来になるかもしれませんが、先端の研究の進展に貢献しているというステータスをアピールできますし、自社製品の開発技術に応用する可能性も期待できます。
 したがって大学としては、開設自体にはリスクはないので、設立趣旨が正当で寄付金さえ集まれば、ほとんどの寄付講座が成立します。

 寄付講座をつくるには、最低2000万~3000万円ほどかかると言われています。なぜなら、特任教授、特任助教、特任講師などの人件費や、大学に対する負担金(大学公共設備の使用に伴う費用や大学本部への上納金)だけで、2000万~3000万円程度はすぐに消えてしまうからです。
 また、まったくゼロから講座をつくるのは難しく、必ず、寄付講座の人事や運営資金に責任を持ち、運営の面倒を見る親講座が必要です。日本経済が沈滞している現在、きちんとした成果の出せない講座は、寄付金が続かずに消滅したり、親講座の一部分になって受け継がれます。東大でも、これまでに、たくさんの寄付講座が誕生し、たくさんの講座が消滅していきました。
 そのようななかで、幸いにも、私がつくった3つの寄付講座は、良好な業績を出しながら、今も存続しています。3つの講座は、次の通りです。

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執筆者プロフィール
髙本眞一 1947年兵庫県宝塚市生れ、愛媛県松山市育ち。73年東京大学医学部医学科卒業。78年ハーバード大学医学部、マサチューセッツ総合病院外科研究員、80年埼玉医科大学第1外科講師、87年昭和病院心臓血管外科主任医長、93年国立循環器病センター第2病棟部長、97年東京大学医学部胸部外科教授、98年東京大学大学院医学系研究科心臓外科・呼吸器外科教授、2000年東京大学医学部教務委員長兼任(~2005年)、2009年より三井記念病院院長、東京大学名誉教授に就任し現在に至る。この間、日本胸部外科学会、日本心臓病学会、アジア心臓血管胸部外科学会各会長。アメリカ胸部外科医会(STS)理事、日本心臓血管外科学会理事長、東京都公安委員を歴任。 ↵手術中に超低温下で体部を灌流した酸素飽和度の高い静脈血を脳へ逆行性に自然循環させることで脳の虚血を防ぐ「髙本式逆行性脳灌流法」を開発、弓部大動脈瘤の手術の成功率を飛躍的に向上させたトップクラスの心臓血管外科医。
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