5年目を迎えた「3.11」(上)被災民が直面する「老々介護」の悲惨な現実

執筆者:吉野源太郎 2015年3月11日
エリア: 日本

 東日本大震災から4年の節目が2日後に迫った3月9日。霧雨の降る福島県南相馬市の中心街が、最近見たことのないような人出でにぎわった。

 地場の中堅建設業、石川建設工業の会長石川和夫氏の葬儀がこの日、市内の葬儀場で行われたのである。3月3日に死去した氏を送るために、県内外の同業者はもとより、南相馬市長、地元選出国会議員ら約600人が参列した。震災後は火の消えたようだった通りは久々に車であふれた。

 太平洋戦争末期に創業者の父の後を継いでから、氏の率いる石川建設は南相馬と福島浜通りの歴史とともに歩んできた。戦後の復興、原子力発電所の誘致、バブル経済の栄華とその後の転落――今では、氏はそのすべてを知る唯一の生き証人だった。地域社会の相談役を務める長老を自他共に認め、戦争体験を交えて誇らしげにその人生を語って聞かせていたものだった。

 その華やかな生き方は2011年3月11日を境に暗転した。氏の後を襲った石川俊・現社長は言う。

「あれから父はほとんど口をきかなくなり、毎日しかめっ面をして暮らすようになりました」

 自分が造り上げた堤防や漁港、道路が津波の一撃で破壊された光景は何よりも和夫氏自身をたたきのめした。「経営者になってから70年、自分は一体何をやってきたのか」。時折、愚痴をこぼすようにもなった。

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執筆者プロフィール
吉野源太郎 ジャーナリスト、日本経済研究センター客員研究員。1943年生れ。東京大学文学部卒。67年日本経済新聞社入社。日経ビジネス副編集長、日経流通新聞編集長、編集局次長などを経て95年より論説委員。2006年3月より現職。デフレ経済の到来や道路公団改革の不充分さなどを的確に予言・指摘してきた。『西武事件』(日本経済新聞社)など著書多数。
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