病気を治すのは「いのちの力」
病気を治すのは「いのちの力」(16)

患者さんとともに生きる

執筆者:髙本眞一 2015年3月14日
カテゴリ: 医療

 東大時代に寄付講座を立ち上げたお話は、すでにいたしましたが、それとは別に、2004年、文部科学省の科学技術振興調整費によって運営される「東京大学医療政策人材養成講座(以下、HSP:HEALTH CARE AND SOCIAL POLICY LEADERSHIP PROGRAM)」と称する、ユニークな講座も創設しました。

医療行政や医療財政などに関しては、いろいろなところでさまざまな人が意見を出しているのですが、医療政策については、なかなか語られていません。医療が激動の時代を迎え、医療政策への関心が高まっているにもかかわらず、政策提言ができる人材不足は明らかでしたので、HSPを提案するにいたりました。この科学技術振興調整費は、振興分野の人材育成に関して数多く寄せられる公募企画の中から、テーマの重要性、先進性が認められたもののみに対して、5カ年にわたって交付されるものです。行政側も医療政策を策定する際に、人材の不足を大きな課題としてとらえていたのだと思います。

 HSPは、1年の期間で、医療政策を立案・推進する、次世代のリーダー育成を目的としました。その方法論が、意欲的でした。医療政策立案者、医療提供者、患者支援者、医療ジャーナリストという、ともすると対立しがちな4つのステークホルダー(利害関係者)が一堂に会し、医療に関する様々な分野で活躍する専門家を講師に招いて講義を聞き、問題意識とアプローチを共有したうえで、立場を越えて具体的な政策課題に取り組み、最終的に学術論文や政策提言をまとめて終了という流れになります。特に、患者代表を受け入れるという試みは、あまり前例がなく評価されたと思います。
 HSPを運営する主体も東京大学としては先進的でした。東京大学医学部と先端科学技術センターの2つの部局が連携して発足させたプロジェクトだったのです。いわゆる縦割りの組織運営が当たり前になっている同大学では、2つの部局が協同するのはきわめて珍しいケースでした。

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執筆者プロフィール
髙本眞一 1947年兵庫県宝塚市生れ、愛媛県松山市育ち。73年東京大学医学部医学科卒業。78年ハーバード大学医学部、マサチューセッツ総合病院外科研究員、80年埼玉医科大学第1外科講師、87年昭和病院心臓血管外科主任医長、93年国立循環器病センター第2病棟部長、97年東京大学医学部胸部外科教授、98年東京大学大学院医学系研究科心臓外科・呼吸器外科教授、2000年東京大学医学部教務委員長兼任(~2005年)、2009年より三井記念病院院長、東京大学名誉教授に就任し現在に至る。この間、日本胸部外科学会、日本心臓病学会、アジア心臓血管胸部外科学会各会長。アメリカ胸部外科医会(STS)理事、日本心臓血管外科学会理事長、東京都公安委員を歴任。 ↵手術中に超低温下で体部を灌流した酸素飽和度の高い静脈血を脳へ逆行性に自然循環させることで脳の虚血を防ぐ「髙本式逆行性脳灌流法」を開発、弓部大動脈瘤の手術の成功率を飛躍的に向上させたトップクラスの心臓血管外科医。
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