クオ・ヴァディス きみはどこへいくのか?
クオ・ヴァディス きみはどこへいくのか?

スンニ派に眠らされたわが古い記憶

徳岡孝夫
執筆者:徳岡孝夫 2007年4月号
カテゴリ: 国際
エリア: 中東

 歴史をつくる人は、その直前に悩ましい一刻を味わうものらしい。女として初めてアメリカ大統領になろうかというヒラリー・クリントンも例外ではなかろうと推察される。 勝って壇上に立ち、喜び狂う支持者の叫び声に祝福される。無数の風船が上がる。天井から滝のように紙吹雪が降る。感動に声つまらせながら「アメリカは歴史のドアを開いた」といった意味のことを、気のきいたスピーチにまとめて言う。 プレジデントという終身称号を持つ夫ビル(ファースト・ハズバンドと呼ばれるようになるのか?)と腕を組んで、かつてファースト・レディとして住んだ家に、マダム・プレジデントとして入る。世界中が投げる視線の焦点に立つ。目くるめく瞬間。ところが人生の跳躍の前には、えてして躊躇と煩悶がある。 先日ヒラリー上院議員は、夢を現実にするために必要な最大の武器を手放そうとした。いや手放すと、もう宣言してしまった。 五年前の米上院は、サダム・フセインのイラクを武力で叩くための決議案を議論した。ヒラリー議員は決議案に賛成し、それは「ブッシュの戦争」「共和党の戦争」を支える大義になった。だがヒラリーは「あのときの賛成投票は間違いだったと認めて謝る気はない」と言うのである。

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執筆者プロフィール
徳岡孝夫
徳岡孝夫 1930年大阪府生れ。京都大学文学部卒。毎日新聞社に入り、大阪本社社会部、サンデー毎日、英文毎日記者を務める。ベトナム戦争中には東南アジア特派員。1985年、学芸部編集委員を最後に退社、フリーに。主著に『五衰の人―三島由紀夫私記―』(第10回新潮学芸賞受賞)、『妻の肖像』『「民主主義」を疑え!』。訳書に、A・トフラー『第三の波』、D・キーン『日本文学史』など。86年に菊池寛賞受賞。
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