テロリストの誕生(2)塀の中の仲間たち

執筆者:国末憲人 2015年3月17日
エリア: ヨーロッパ 中東

 フランスにイスラム教徒はどれほどいるのだろうか。一般的には500万人と言われ、メディアでもこの数が広まっているが、何かの根拠に基づいているわけではない。フランスでは宗教を問う世論調査が禁止されているため、移民の数から推測したに過ぎない。宗教から縁遠くなった人が相当数に及ぶとみられることから、実際には200万人程度と考える専門家もいる。仮にそうだとすると、フランスの人口は6600万ほどだから、イスラム教徒の割合はせいぜい3%ほどに過ぎないことになる。

 一方で、イスラム教徒の割合が非常に高い空間も、フランスには存在する。代表的な例が、刑務所である。統計上だと、収監されている人に占めるイスラム教徒の割合は約半数に及ぶ。食事に出される豚肉の食べ残しなどをフランスの社会学者が調べたところ、受刑者の7割ほどをイスラム教徒が占める施設もあったという。

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執筆者プロフィール
国末憲人(くにすえのりと) 東京大学先端科学技術研究センター特任教授 1963年岡山県生まれ。85年大阪大学卒業。87年パリ第2大学新聞研究所を中退し朝日新聞社に入社。パリ支局長、論説委員、GLOBE編集長、朝日新聞ヨーロッパ総局長などを歴任した。2024年1月より現職。著書に『ロシア・ウクライナ戦争 近景と遠景』(岩波書店)、『ポピュリズム化する世界』(プレジデント社)、『自爆テロリストの正体』『サルコジ』『ミシュラン 三つ星と世界戦略』(いずれも新潮社)、『イラク戦争の深淵』『ポピュリズムに蝕まれるフランス』『巨大「実験国家」EUは生き残れるのか?』(いずれも草思社)、『ユネスコ「無形文化遺産」』(平凡社)、『テロリストの誕生 イスラム過激派テロの虚像と実像』(草思社)など多数。
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