国際主義と対米重視の間で揺れるカナダの苦悩

野嶋剛
執筆者:野嶋剛 2007年5月号
カテゴリ: 国際
エリア: 北米

アフガニスタンで五十三人の死者を出したカナダ軍。いま「小さな苦悩」が「深刻な苦悩」に拡大しつつある。 カナダの外交・安全保障政策が激しく動揺している。震源地はアフガニスタンだ。「血のイースター」 四月九日、カナダの朝刊各紙には悲劇的な見出しが躍った。 カンダハル州西部で八日、走行中のカナダ軍の装甲車両の車列が路上に仕掛けられた「路肩爆弾」の攻撃を受けた。兵士六人死亡、二人重傷。二〇〇二年以来、北大西洋条約機構(NATO)の一員としてアフガンに展開するカナダ軍にとって、単独の事案としては最も深刻な犠牲となった。 カナダ軍はアフガン南部のカンダハル州やヘルマンド州などタリバーンの拠点で戦闘リスクの高い地域を受け持つ。事態を受け、保守党政権のマッケイ外相は、九十年前の一九一七年四月に第一次大戦下のフランスでカナダ軍が甚大な犠牲に耐えてドイツ軍に勝利した「ヴィミー・リッジの戦い」になぞらえ、「自由のためのコストを真摯に思い起こそう」と呼びかけた。だが国民の共感が十分に得られたとは言い難い。 八日の被害のあと、十一日にも路肩爆弾で二人が死亡。カナダ軍がアフガンで失った兵士の数は五十三人に達した。同じくアフガンで活動する独仏伊などNATO諸国のなかで要員あたりの死亡率はカナダが最も高い。

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執筆者プロフィール
野嶋剛
野嶋剛 1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に「イラク戦争従軍記」(朝日新聞社)、「ふたつの故宮博物院」(新潮選書)、「謎の名画・清明上河図」(勉誠出版)、「銀輪の巨人ジャイアント」(東洋経済新報社)、「ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち」(講談社)、「認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾」(明石書店)、訳書に「チャイニーズ・ライフ」(明石書店)。
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