台湾の「銅像政治学」と今も続く「蒋介石攻撃」

野嶋剛
執筆者:野嶋剛 2015年3月20日
エリア: 中国・台湾

 台湾で昨年上映された映画『行動代号:孫中山(邦題:コードネームは孫中山)』という映画のDVDが2月に発売されたので、早速、『博客来』という台湾のネットショップで取り寄せた。なかなかいい映画だった。5段階評価ならば4か5の星をあげたい。ちょうどこの原稿を書いていたら、大阪アジアン映画のコンペティション部門でグランプリと観客賞をダブル受賞した。台湾の映画賞である金馬奨で最優秀脚本賞も取っている。台湾映画のレベルの高さを示す一作だ。

 タイトルの「行動代号」とは「作戦のコードネーム」という意味になる。孫中山は台湾や中国での孫文の呼び方だ。

 給食費や学級費が払えない貧困家庭の子供たちが団結して「作戦」を立て、小学校の体育館の倉庫に運動用具などと一緒にほこりをかぶって放置された孫文 の銅像を盗み出し、売り払ってお金を稼ごうという話である。

 90分あまりの映画のなかで、中国革命の父として中国近代史で大きな功績を残し、台湾でも国民党一党独裁時代に神格化されていた孫文=国父について、子供たちは一度もその歴史的、政治的な存在意義について言及しなかった。かつては崇拝の対象だった孫文がいまや単なる記号となり、こうした娯楽作品で「消費」され得ることを伝えるため、制作側があえてそうしたとしか思えない。

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執筆者プロフィール
野嶋剛
野嶋剛 1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に「イラク戦争従軍記」(朝日新聞社)、「ふたつの故宮博物院」(新潮選書)、「謎の名画・清明上河図」(勉誠出版)、「銀輪の巨人ジャイアント」(東洋経済新報社)、「ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち」(講談社)、「認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾」(明石書店)、訳書に「チャイニーズ・ライフ」(明石書店)。
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