病気を治すのは「いのちの力」 (17)

医療事故を起こした医者の復活は可能か?

執筆者:髙本眞一 2015年3月21日
タグ: 日本

 東京医科大学病院(東京都新宿区)で、平成14年10月から1年間に、立て続けに心臓弁膜症の手術を受けた患者4人が死亡するという事態が起きました。いずれの執刀医も同一人物であるという内部告発があり、メディアはこれを大々的に報道、それを受けて、手術の結果は医療ミスではないかと疑った3遺族が、死亡患者3人のカルテなどの保全を司法に求めました。

 早速、同医大病院は外部の識者による第3者機関をつくり、一連の事件に関する調査を開始して、報告書を提出しました。報告書の内容は「執刀医の経験不足で、合併症が起き、死亡という結果にいたった」というものでした。術後合併症を併発するという不可抗力が原因で医療ミスとは言えないものの、外科医が籍を置く外科学教室の主任教授は、患者の死亡が続きながら、同一の外科医が執刀したことについて「トレーニングとして手術の経験を積ませようと思った」とも語りました。

カテゴリ: 医療・サイエンス
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
髙本眞一(たかもとしんいち) 1947年兵庫県宝塚市生れ、愛媛県松山市育ち。73年東京大学医学部医学科卒業。78年ハーバード大学医学部、マサチューセッツ総合病院外科研究員、80年埼玉医科大学第1外科講師、87年昭和病院心臓血管外科主任医長、93年国立循環器病センター第2病棟部長、97年東京大学医学部胸部外科教授、98年東京大学大学院医学系研究科心臓外科・呼吸器外科教授、2000年東京大学医学部教務委員長兼任(~2005年)、2009年より三井記念病院院長、東京大学名誉教授に就任し現在に至る。この間、日本胸部外科学会、日本心臓病学会、アジア心臓血管胸部外科学会各会長。アメリカ胸部外科医会(STS)理事、日本心臓血管外科学会理事長、東京都公安委員を歴任。 ↵手術中に超低温下で体部を灌流した酸素飽和度の高い静脈血を脳へ逆行性に自然循環させることで脳の虚血を防ぐ「髙本式逆行性脳灌流法」を開発、弓部大動脈瘤の手術の成功率を飛躍的に向上させたトップクラスの心臓血管外科医。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top