ミャンマー軍空爆で懸念される「中国のクリミア」問題

 鳩山由紀夫元首相という稀代のトリック・スターがクリミアの訪問によって、我が国では1年前のロシアによるクリミア編入が俄かに戯画化され、問題の本質が覆い隠されてしまったかのようだ。だが、3月15日のロシアの国営放送が伝える「ロシア人が住む歴史的領土が危険にさらされているのを放っておくことはできない」とのプーチン大統領の発言は、改めて歴史と民族が複雑に絡み合った領土問題の本質を浮き彫りにしたといえるだろう。ここでいう「ロシア人が住む歴史的領土」がクリミアを指すことはいうまでもないことだ。

 このプーチン発言を踏まえながら、歴史を17世紀半ばの明朝から清朝への交代期の中国西南辺境に目を転ずることとする。

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執筆者プロフィール
樋泉克夫(ひいずみかつお) 愛知県立大学名誉教授。1947年生れ。香港中文大学新亜研究所、中央大学大学院博士課程を経て、外務省専門調査員として在タイ日本大使館勤務(83―85年、88―92年)。98年から愛知県立大学教授を務め、2011年から2017年4月まで愛知大学教授。『「死体」が語る中国文化』(新潮選書)のほか、華僑・華人論、京劇史に関する著書・論文多数。
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