民営化郵政「投信だけが頼り」に潜むリスク

2007年5月号
エリア: 日本

利益を上げるためには、なりふり構っていられない。投資信託をいよいよ積極販売へ――。だが、顧客ニーズとはズレが目立ち……。 利益を上げれば民業圧迫と批判されるだけだが、利益が上がらなければ民営化失敗との非難が噴出し、政治問題にもなりかねない。前に進む以外に選択肢はないのだ――。郵政民営化までちょうど半年となった四月一日、民営化準備会社「日本郵政」の西川善文社長はそんな思いを噛みしめていたに違いない。 この日から、民営化までの業務を担当する「日本郵政公社」の総裁を兼務することになった西川氏は、今秋の民営化スタートのさらに先を気にしている。事業子会社の上場だ。 民営化に伴って持ち株会社となる日本郵政の傘下には、四つの事業子会社(ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険、郵便事業会社、郵便局会社)がぶらさがる。そのうち、金融二社の上場は二〇一一年とされてきたが、西川氏は今年に入って「一年前倒し」を口にするようになった。上場によって政府の保有株式を市場に放出していけば、民業圧迫批判を和らげつつ住宅ローンなどの新規事業に参入することができる。 魅力的な上場会社になるには安定した収益の柱が必要だ。郵便局の実態は巨大な「債券ファンド」である。百九十兆円近い貯金のうち四分の三を国債と地方債で運用しているため、金利上昇が進み国債価格が下落すれば、財務内容は一気に悪化する。現時点で、一一年度に四千八百八十億円の純利益が出ると見込んでいるが、仮に十年国債の金利が四%に上昇すれば純利益は五百九十億円に急減する。一方で、郵便貯金からの資金流出は止まらず、昨年度は貯金残高が十三兆円減った。一日に一千億円減ったこともある。これでは上場しても投資家が怖がって株を買わない。

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