年金問題の「現実」と政争にズレあり

執筆者:山田利三 2007年7月号
エリア: 日本

社会保険庁の杜撰な仕事ぶりは、これからまだまだ露見する。与野党とも、参院選ばかりを考えていたら、問題の解決にはつながらない。 六月四日朝、首相官邸。自民党の中川昭一政調会長、河村建夫政調会長代理、舛添要一参院政審会長は参院選の公約の最終案を携え、安倍晋三首相を訪れた。「こちらも年金を取り上げて対抗しないと勝てないのではないか」 首相は「年金」を争点に仕掛けた民主党に対抗するため自民党も従来の「社会保険庁改革」ではなく「年金」を掲げる必要性を指摘し、三人を見回して、こう指示した。「年金記録問題には万全を期したが、まだ国民に伝わっていない。年金問題を最重要政策として公約に取り入れてほしい」 首相は当初、憲法改正や教育再生といった、自らの「哲学」を披瀝できる分野で参院選を乗り切る意向だった。低下していた内閣支持率は四月頃から反転。ところが、五月下旬に入り、昨年来、民主党の長妻昭議員がこつこつと調査を進めてきた年金支給漏れ問題に火がついた。昨年八月以降、社会保険庁が保険料納付記録を訂正した件数は三十二万件に上る。民主党は当初こちらを追及しようとしていたが、よりインパクトの強いキャッチフレーズをひねりだした。「消えた年金」。払い主がわからず宙に浮いている五千万件の年金納付記録はそう表現され、連日ワイドショーで取り上げられた。広範な年金不信が再び湧き起ころうとしていた。

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