香港トップ「五年後の非民主的選挙」の行方

執筆者:倉田徹 2007年8月号
タグ: 香港 中国 日本
エリア: アジア

[香港発]七月一日、香港は中国への返還十周年を迎えると同時に、曾蔭権(ドナルド・ツァン)行政長官の二期目の任期がスタートした。曾蔭権は今年三月の行政長官選挙に圧勝し、二期目に入るにあたり、高官の異動を行なった。行政長官に三選は認められないため、曾蔭権の任期が切れる二〇一二年をにらみ、次の長官ポストをめぐる競争が、早くも展開されようとしている。 中国政府は「香港基本法」で、行政長官選挙の最終的な普通選挙化を目指す漸進的な民主化を約束してはいるものの、その実現を急ぐつもりはない。次回の選挙も現行の制度同様に、親中派を中心とする選挙委員会による選出という形式になる可能性が高い。このため、当選には、北京の支持は絶対不可欠である。

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執筆者プロフィール
倉田徹(くらたとおる) 立教大学法学部政治学科教授。専門は現代中国・香港政治。1975年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士後期課程修了、博士(学術)。香港日本国総領事館専門調査員、日本学術振興会特別研究員、金沢大学人間社会学域国際学類准教授を経て、2013年から現職。 主な著書にサントリー学芸賞を受賞した『中国返還後の香港――「小さな冷戦」と一国二制度の展開』(名古屋大学出版会、2009年)、『香港 中国と向き合う自由都市』 (共著、岩波書店、2015年)、『香港の過去・現在・未来 東アジアのフロンティア』(勉誠出版、2019年)、『香港雨傘運動と市民的不服従 「一国二制度」のゆくえ』(社会評論社、2019年)、『香港危機の深層 「逃亡犯条例」改正問題と「一国二制度」のゆくえ』(東京外国語大学出版会、2019年)。
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