インテリジェンス・ナウ

エストニアを襲ったのは誰だ? サイバー戦に備えるロシアの新組織

執筆者:春名幹男 2007年9月号
エリア: ヨーロッパ

 あの奇妙な事件は、今年四月から五月にかけて、旧ソ連構成国だったバルト三国の一つ、エストニアとロシアの関係が急速に悪化した時に起きた。 エストニアが首都タリンの中心部に置かれていたソ連兵士の記念碑を撤去し、郊外の墓地に移転したことから、騒ぎは広がった。エストニアは今や北大西洋条約機構(NATO)、欧州連合(EU)の一員だが、バルト三国にはソ連に併合された屈辱の歴史がある。ソ連兵士記念碑は、ソ連による「不法占領」の象徴とみなされてきたのだ。 ロシア側はこれを許し難い暴挙と考えた。プーチン露大統領を熱烈に支持する青年組織「ナーシ(友軍)」数百人がモスクワのエストニア大使館に押しかけ抗議した。現代版の「ヒトラー・ユーゲント(青少年団)」だ。

カテゴリ: 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
春名幹男(はるなみきお) 1946年京都市生れ。国際アナリスト、NPO法人インテリジェンス研究所理事。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授、早稲田大学客員教授を歴任。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『米中冷戦と日本』(PHP)、『仮面の日米同盟』(文春新書)などがある。
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