「運河拡張」迫るパナマで示した日本の存在感

執筆者:市川亮太 2007年9月号
カテゴリ: 国際 経済・ビジネス
エリア: 中南米

[サンパウロ発]中米パナマの総人口の三割、百十八万人が暮らす首都パナマ市。太平洋に面するパナマ湾の岸壁に数十メートルおきに並ぶ大口径の土管からは、悪臭を放つ黒い水が絶え間なく吐き出される。高層ビルが立ち並ぶ新市街を走るマタスニヨ川には、目を刺す臭いとともに生活排水がごうごうと泡を立てて流れ込み、野鳥が競って川面に首を突っ込んで「獲物」を漁る。スペイン植民地時代から太平洋と大西洋を結ぶ交通の要衝として栄えたパナマには、米政府が敷設した下水道こそ存在するが、汚水処理施設がないため、同市だけで一日当たり約三十三万立方メートルの生活排水やし尿が海に垂れ流しになっている。 同市を流れる川の汚染度は高度経済成長期の隅田川の三倍に達し、保健省令で二〇〇一年以降、湾での漁業は禁止されている。海岸地区は米国人観光客で賑わい、不動産王ドナルド・トランプ氏が巨大リゾート計画に着手するなど建設ブームに沸くものの、リゾート施設に面する海岸は、大腸菌濃度が日本の海水浴許容基準の二十倍に達し、遊泳が不可能。市民にとって、パナマ湾再生は長年の悲願だった。環境悪化を看過できなくなった政府は〇一年二月、下水処理技術に定評がある日本に対し、下水浄化事業への借款を要請した。

この記事は役に立ちましたか?
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
この記事をSNSにシェアする
執筆者プロフィール
comment:0
icon
  • 記事の閲覧、コメントの投稿には、会員登録が必要になります。
フォーサイトのお申し込み
注目記事ランキング
  • 24時間
  • 1週間
  • f
  • 新着
  • 高評価
  • コメント数順