パイプラインで軍隊を“送り込む”ロシアの新手

遠藤良介
執筆者:遠藤良介 2007年9月号
カテゴリ: 国際
エリア: ロシア

[モスクワ発]ロシアに新たな軍隊が誕生する。八月一日付でプーチン大統領が署名した法律改正案は、国営天然ガス企業ガスプロムと国営石油パイプライン企業トランスネフチに“独自軍”の創設を認めるものだった。 法改正の中身は、両社に「国家戦略企業」の地位を与え、社の警備部門を“軍”と言えるレベルにまで引き上げるものだ。両社はあらゆる種類の拳銃や小銃を装備し、実際に使用することを許される。“徴兵”も両社の裁量で行なえるようになり、部隊の規模にも制約はない。 両社のこれまでの警備状況は明らかでないが、ある大手警備会社は「通常、拳銃の所持は要人警護や巨額の資金輸送に限られている」と証言しており、民間警備会社を使うロシアの一般企業とは全く別格の権限を両社が与えられたことは確かだ。 法案は三月上旬、プーチン政権に近い武力系省庁出身(シロビキ)の議員らによって下院に提出された。法案の目的について与党・統一ロシアのグロフ議員は、パイプラインから石油やガスが抜き取られる窃盗事件が年間約千件に達していることを挙げ、「パイプラインに対するテロ攻撃はただちに(エネルギー供給国としての)ロシアへの信頼を失墜させる」と主張した。与党系議員からさえも「企業軍を制御できなくなるおそれがある」などと反論が出たものの、結局は賛成派の主張が通った。

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執筆者プロフィール
遠藤良介
遠藤良介 1973年愛媛県生れ。東京外国語大学外国語学部ロシア・東欧語学科卒。同大学院地域文化研究科博士前期課程修了(国際学修士)。産経新聞社入社。横浜総局、盛岡支局、整理部、外信部を経て2006年12月からモスクワ特派員。共著に「誰がメドべージェフを不法入国させたのか-国賊たちの北方領土外交」(産経新聞出版)。
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