中国残留孤児の「尊厳」を守る日本の責務

執筆者:草生亜紀子 2007年9月号
エリア: アジア

ようやく支援策ができたが、実施はこれから。壮絶な人生を生き抜いた人たちには、穏やかな老後を送る権利がある。「日本に帰ってきて良かったと心から思います」――中国残留孤児集団訴訟原告団全国連絡会代表の池田澄江さん(六二)は七月十日、官邸で面談した安倍晋三首相に笑顔で語った。前日、自民・公明両党の与党プロジェクトチームがまとめた中国残留孤児に対する新たな支援策を孤児側が受け入れた。そして、全国十五地裁で国に賠償を求めて起こしていた集団訴訟の終結を決断。面談はそれを受けて行なわれたものだった。 ほぼ二年間進展のなかった新たな支援策作りが今年に入って急に動き出したのは、支持率が急落するなか「温かみ」をアピールできる明るい話題を必要とした安倍政権の選挙対策だった色彩も強いが、七割近くが生活保護に頼るという「圧倒的貧困」(弁護団)に喘ぐ孤児側は、このチャンスをつかむことにした。

カテゴリ: 社会 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
草生亜紀子(くさおいあきこ) 翻訳・文筆業。NGO職員。産経新聞、The Japan Times記者を経て、新潮社入社。『フォーサイト』『考える人』編集部などを経て、現職。
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