米中「蜜月」につのる台湾の不安

執筆者:野嶋剛 2007年11月号
エリア: 北米 アジア

それでも陳水扁政権は米国の嫌う住民投票にまっしぐら。米中台の「現状維持」認識のズレは危険だ。[ワシントン発]「これは受け取れない」 米国防総省の担当者に、台湾から派遣された武器購入の交渉担当者が「レター・オブ・リクエスト」と呼ばれる購入依頼書を渡そうとすると、突き返される事態が続いている。台湾の担当者が食い下がって理由を尋ねると、指で天井の方を指して「上(ホワイトハウス)の意向」を示唆して、首を横に振る――。 台湾は米国から改良型F16戦闘機を六十六機、一括購入する方針を決め、六月の立法院(国会)で特別予算を通した。特別予算は十月末が執行期限。その前に米国から価格提示を受けられなければ自然消滅する。台湾側ではすでに焦りを通り越し、あきらめのムードが漂う。

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執筆者プロフィール
野嶋剛(のじまつよし) 1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に『イラク戦争従軍記』(朝日新聞社)、『ふたつの故宮博物院』(新潮選書)、『謎の名画・清明上河図』(勉誠出版)、『銀輪の巨人ジャイアント』(東洋経済新報社)、『ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち』(講談社)、『認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾』(明石書店)、『台湾とは何か』(ちくま新書)、『タイワニーズ 故郷喪失者の物語』(小学館)、『なぜ台湾は新型コロナウイルスを防げたのか』(扶桑社新書)など。訳書に『チャイニーズ・ライフ』(明石書店)。最新刊は『香港とは何か』(ちくま新書)。公式HPは https://nojimatsuyoshi.com
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