オーストラリア「ウラン外交」急加速の理由

執筆者:井田純 2007年11月号

中国、インド、そしてついにはロシアにまでウランを輸出しようというオーストラリア。その外向き・内向きの事情とは――。[シドニー発]「ロシアは、欧州ではもちろん、中東でも、そしてこのアジア太平洋地域でも、極めて大きな影響力を持つ重要な国だ」。九月、アジア太平洋経済協力会議(APEC)開催中のシドニー。プーチン露大統領との首脳会談後、議長国・オーストラリアのハワード首相は、各国記者団の前でこう持ち上げてみせた。 ロシア首脳のオーストラリア訪問は、旧ソ連時代を含めてこれが初めて。これまで焦点が当たることが少なかった二国間関係だが、今会談は注目が集まった。両首脳がこの機会に原子力平和利用協定に調印し、豪州産ウランをロシアに輸出する道を開いたからだ。オーストラリア国内では、野党・民主党や緑の党などがロシアへのウラン輸出に強く反対していた。ロシアとイランとの関係から、自国産ウランがロシアを経由してイランの核開発に利用されることへの懸念も出ていた。記者の質問も当然のように「ウラン」に集中した。 オーストラリア政府の積極的なウランセールスの動きは、この対ロシア原子力協定以前から目立っていた。まず昨年四月、中国の温家宝首相がオーストラリア入りした際に、同様の平和利用協定を締結。さらに今年八月には、ウラン輸出先を核拡散防止条約(NPT)加盟国に限るとしてきたこれまでの政府方針を転換し、非加盟国のインドへの輸出容認を決めた。中印両国は、急速な経済成長に伴って増大するエネルギー需要をまかなうため、原発建設計画を強力に推し進めている。中国は二〇二〇年までに新たに三十基の原発を建設する計画がある。かたやインドは、米国との原子力協力協定に合意し、今後十数年の間に原発による発電量を少なくとも現在の数倍規模に増やす予定だ。オーストラリアはこうした流れを捉え、大国との「ウラン外交」を一気に加速させた感がある。

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