ロシアに続々誕生する「国策会社」の脅威

執筆者:内藤泰朗 2007年11月号
カテゴリ: 国際 経済・ビジネス
エリア: 中国・台湾

[モスクワ発]あふれる石油マネーにより歴史的な好景気が続くロシアでは、膨らむ国家予算を投入した「ゴスコルポラツィヤ」と呼ばれる新たな巨大国策会社が次々と創設されている。ハイテク、ナノテクといった新産業育成に加え、二〇一四年のソチ冬季五輪開催準備を行なう国策会社までもが誕生し、その勢いは止まるところを知らない。
 そして、プーチン大統領(五五)は、来春の大統領任期満了後もロシアの政治経済に影響力を行使し続けると宣言した。つまり、これら国策会社の設立ラッシュは、国家が経済を牛耳る国家資本主義体制を中心に据えた「プーチン王朝」の確立に向けた潮流といえる。だが、ソ連を彷彿とさせる国家の経済への介入は、大統領が目指す「強いロシア」の復活につながるのか、それとも、再びロシアの崩壊をもたらすのか、論議を呼んでいる。
 ロシア国内での報道によると、ブームとなっている国策会社は、国家が重要と判断した分野の課題を解決するために創設される会社組織で、個々の会社ごとに特別の法律をつくり、内閣、または大統領が直接統轄する。さらに、その競争力を増すため、税制面などで様々な特権を持つ既存の国営会社以上に優遇される。
 たとえば、国策会社に振り当てられた事務所や建物などの不動産を含む国家資産は、その会社に所有権が移される。情報の開示義務も株式会社に比べて緩やかで、収支決算報告や人事情報を公開しなくてもいいし、会計検査院による監査もない。大統領が社長を直接任命・解任し、政府の担当閣僚が統制する。社長は有力な大臣が兼務してもいい。国家からの支援を受けるため倒産しないし、利益が生じても、株式会社ではないため、分配する義務もない。政府は様々な免税措置も検討中だ。
 国営会社の場合は会計監査が行なわれるほか、少なくとも収支決算報告や人事情報などの開示義務もある。そして利益の分配も行なわれなければならない。一方の国策会社の活動実態は秘密のベールに包まれ、国営会社ができないようなことでも実行可能となる。どのように予算が使われようと、税務当局も捜査当局も中央銀行も、それを査察することができない「モンスター会社」(有力日刊紙『ガゼータ』)なのだ。
“皇帝”とも言うべき地位を確立したプーチン大統領が任命した社長たちの義務は、大統領に絶対的服従を誓うこと、そして、年に一度、大統領か担当閣僚に決算報告することだけだ。ある意味、国策会社の社長たちは大統領の命令ひとつで動く軍隊指揮官のような存在で、「強いロシア」の復活を目指すプーチン氏の意向を汲んで世界に挑むことになる。

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