戦争の危機を高めた「核の番人」の対イラン譲歩

執筆者:会川晴之 2007年11月号
カテゴリ: 国際
エリア: 中東

「三歩進んで二歩退る」なら交渉術としてありうるが、IAEA事務局長は後退につぐ後退。武力行使の可能性をかえって高めてしまった。[ウィーン発]イラン核問題への対応をめぐり、国際原子力機関(IAEA)と欧米諸国の間に亀裂が走っている。きっかけは、IAEAの事務局が八月二十一日にイランと結んだ「作業計画」だ。両者の交渉が終始イランペースで進んだため、IAEAの主要メンバーである欧米諸国は「イラン寄りで不十分」と批判。矢面に立たされたエルバラダイ事務局長は「二、三カ月以内に前進がある」と“釈明”しながらイランに全面協力を促すが、確証はない。イランの出方次第では、年末以後、戦争を含めた重大局面を迎える可能性もある。     * 八月二十九日朝、エルバラダイ事務局長はIAEAの本部があるウィーン市内の自宅で米英仏独の担当大使と向かい合っていた。「安保理決議に則ってイランが濃縮活動を停止しなければダメだ」。「IAEA理事会の承認を得ずに事務局がこのような合意を結ぶのは越権行為だ」。「IAEAとではなく、IAEAの事務局とイランの合意と明記すべきだ」。四カ国の大使は「作業計画」を痛烈に批判し、同日、IAEAが理事国(三十五カ国)に配布する予定の報告書に、欧米の主張を盛り込むようねじ込んだ。いつもは多弁の事務局長は、約一時間の会談中ほとんど発言せず、苦虫を噛み潰したような表情でIAEAに登庁した。筆者がその道中で会談の内容を尋ねても「この話はノーコメント」と二度繰り返すだけだった。

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