「コストシフト」で介護改革に挑むドイツの漸進

執筆者:斎藤義彦 2007年12月号
カテゴリ: 国際
エリア: ヨーロッパ

伸びない保険料、増える要介護者。先進国が等しく直面する介護保険制度の構造問題を解決するため、ドイツが一歩を踏み出した。 ドイツ西部の老人ホーム。社員寮を改造したがらんとした部屋で二人の年老いた男性がベッドに寝かされている。そのうちの一人(六八)が立ち上がろうと必死に上半身を起こすが、それ以上は動けない。腹の部分をベルトで拘束されているからだ。「この人は認知症で、放っておいたら歩き続けてしまう。だから縛らないと」。ヘルパーの女性(三二)は事も無げにそう話す。 男性は農業を営んでいたが、徘徊を始めたため、二年前にホームに入所した。百メートルほどの真っ直ぐな廊下を際限なく往復する。夜は拘束されても上半身を起こしてベッドの柵をつかみ揺すぶり続ける。目は遠くの方を見ているようだ。 男性が寝起きする四階のフロアは認知症の老人を中心に三十四人が暮らす。ヘルパーの数は、昼は三人、夜はたった一人。筆者が訪れた夜は六人がベッドに縛り付けられていた。ベッドから落ちたり、歩き出して転倒するのを防ぐのが目的だ。 ドイツでは介護の「質」の低下が社会問題になっている。介護現場で「質」の鑑定を行なう組織MDSによると、二〇〇四―〇六年の間に、在宅・施設で介護を受ける人の約三割で問題(食事や水分補給が不十分など)が見つかった。さらに施設の約一割で、床ずれが放置されるなど重大な問題が発見された。昨年夏、北西部オスナブリュックで、男性ヘルパー(三〇)が女性(七〇)に六十度の熱湯シャワーを浴びせ全身火傷を負わせた。ヘルパーは今年四月、業務上過失傷害の罪で禁固一年の判決を受けた。

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