インテリジェンス・ナウ

“核の盗人”カーンを泳がせ続けたCIAの大いなる罪と責任

執筆者:春名幹男 2008年1月号
エリア: 北米 アジア

 二〇〇五年、パキスタンでの取材から帰ってきて約一カ月後のことだった。イスラマバードで開拓した取材源から国際電話がかかってきた。「CIA(米中央情報局)はカーン博士を泳がせていたんだが、米安保戦略のコア(核心)にかかわる国に核兵器技術を提供しようとしたから、ブッシュ政権は阻止したんだ」 A. Q. カーン博士、パキスタンの「核兵器の父」である。〇四年二月、国営テレビに登場して、核兵器技術を拡散させたことを懺悔し、自宅軟禁処分を受けた。自ら率いるカーン研究所が構築した「核の闇市場」を通じてリビア、イラン、北朝鮮はもちろん、未確認だがサウジアラビアやシリアにまでも核技術を売り渡し、遂に米政府の逆鱗に触れたというのだ。

カテゴリ:
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
春名幹男(はるなみきお) 1946年京都市生れ。国際アナリスト、NPO法人インテリジェンス研究所理事。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授、早稲田大学客員教授を歴任。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『米中冷戦と日本』(PHP)、『仮面の日米同盟』(文春新書)などがある。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top