【ブックハンティング】「歴史の黒衣」通訳者に聞いたオーラル・ヒストリーの意欲作

執筆者:会田弘継 2008年1月号
タグ: アメリカ 日本

 中曽根康弘元首相の「不沈空母」発言事件。日米外交と通訳といったら、思い出さずにはいられないエピソードだ。 元ワシントン・ポスト紙外交記者ドン・オーバードーファー氏とランチをとりながら、ユーモアたっぷりに顛末を聞いたのは、四年ほど前だった。事件の当事者の一人だ。もう一人の当事者で同時通訳の草分けの村松増美氏からも、そのしばらく前に外国人記者会の晩餐会だったかで、やはり楽しく回顧をお聞きしたと記憶する。 当の中曽根元首相からは直に聞くチャンスはいただいていないが、著書『自省録』(二〇〇四年、新潮社)で「百万語を費やすよりも『不沈空母』の一言が、(悪化していた日米関係の改善に)即座にてきめんに効いたのです」(括弧内は筆者)と回想しているのだから、関係者すべてが、いまではそれぞれに納得し、区切りをつけているのだろう。

カテゴリ: カルチャー
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執筆者プロフィール
会田弘継(あいだひろつぐ) 関西大学客員教授、ジャーナリスト。1951年生まれ。東京外語大英米語科卒。共同通信ジュネーブ支局長、ワシントン支局長、論説委員長などを務め、現在は共同通信客員論税委員、関西大学客員教授。近著に『世界の知性が語る「特別な日本』』 (新潮新書)『破綻するアメリカ』(岩波現代全書)、『トランプ現象とアメリカ保守思想』(左右社)、『増補改訂版 追跡・アメリカの思想家たち』(中公文庫)など。訳書にフランシス・フクヤマ著『政治の衰退』(講談社)など。
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