ベネズエラ国民に「ノー」を突きつけられたチャベスの蹉跌

執筆者:遅野井茂雄 2008年1月号
エリア: 中南米

 一九九八年の大統領当選以来十一回に及ぶ選挙と国民投票を勝ち抜いてきたチャベスの不敗神話は崩れた。議会、司法、選挙管理委員会、州政府を掌中に収める権力の絶頂期に国民投票にかけた改憲案は、皮肉にも僅差ながらの敗北となった。苦戦の理由は自ら制定した九九年憲法の大幅改正をこの時期に強行しようとした点に集約されるのではないか。それはかつてペルーのフジモリが九五年大統領選挙で圧勝し再選された直後に憲法解釈法で三選への整備を強行して転落への道を拓いたように、絶大な権力を握る者の不安を物語るものと言えるかもしれない。

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執筆者プロフィール
遅野井茂雄(おそのいしげお) 筑波大学名誉教授。1952年松本市生れ。東京外国語大学卒。筑波大学大学院修士課程修了後、アジア経済研究所入所。ペルー問題研究所客員研究員、在ペルー日本国大使館1等書記官、アジア経済研究所主任調査研究員、南山大学教授を経て、2003年より筑波大学大学院教授、人文社会系長、2018年4月より現職。専門はラテンアメリカ政治・国際関係。主著に『試練のフジモリ大統領―現代ペルー危機をどう捉えるか』(日本放送出版協会、共著)、『現代ペルーとフジモリ政権 (アジアを見る眼)』(アジア経済研究所)、『ラテンアメリカ世界を生きる』(新評論、共著)、『21世紀ラテンアメリカの左派政権:虚像と実像』(アジア経済研究所、編著)、『現代アンデス諸国の政治変動』(明石書店、共著)など。
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