ベネズエラ国民に「ノー」を突きつけられたチャベスの蹉跌

遅野井茂雄
執筆者:遅野井茂雄 2008年1月号
カテゴリ: 国際
エリア: 中南米

 一九九八年の大統領当選以来十一回に及ぶ選挙と国民投票を勝ち抜いてきたチャベスの不敗神話は崩れた。議会、司法、選挙管理委員会、州政府を掌中に収める権力の絶頂期に国民投票にかけた改憲案は、皮肉にも僅差ながらの敗北となった。苦戦の理由は自ら制定した九九年憲法の大幅改正をこの時期に強行しようとした点に集約されるのではないか。それはかつてペルーのフジモリが九五年大統領選挙で圧勝し再選された直後に憲法解釈法で三選への整備を強行して転落への道を拓いたように、絶大な権力を握る者の不安を物語るものと言えるかもしれない。 憲法改正の狙いは、長期政権化を磐石にし、持論の「二十一世紀の社会主義」に向け制度基盤を構築することだった。いずれカストロ亡き後に中南米の反米のリーダーとなるための布石である。彼の反対派制圧は、いずれも法的手続きに則り国民の支持を背景に実現したものであり、言論弾圧と批判された二〇〇七年の反チャベス派テレビ局の閉鎖も、認可の更新をしないというぎりぎりの線で行なわれた。憲法改正を勝ち取ることは、今後の“改革”を進める際に予想される米国などの国際的介入に口実を与えないために必要であったはずだ。

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執筆者プロフィール
遅野井茂雄
遅野井茂雄 筑波大学大学院教授、人文社会系長。1952年松本市生れ。東京外国語大学卒。筑波大学大学院修士課程修了後、アジア経済研究所入所。ペルー問題研究所客員研究員、在ペルー日本国大使館1等書記官、アジア経済研究所主任調査研究員、南山大学教授を経て、2003年より現職。専門はラテンアメリカ政治・国際関係。主著に『21世紀ラテンアメリカの左派政権:虚像と実像』(編著)。
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