クオ・ヴァディス きみはどこへいくのか?

英語ペラペラになって何を喋るの?

執筆者:徳岡孝夫 2008年1月号
エリア: アジア

 ダラスの凶弾に斃れたジョン・F・ケネディが、生きてホワイトハウスに住んでいた頃の話。彼の死を悼んでケネディ国際空港と改称されたニューヨーク最大の飛行場は、アイドルワイルド空港と呼ばれていた。 サンフランシスコからの旅客機の座席でぐっすり眠り、スッチーのお姉さんに「もう着いてるわ」と肩を叩かれて目覚めた私は、寝呆けていたのか、空港内に両替所があったかどうか記憶にない。当座の旅費と小遣いは、ハワイ大学で五週間の準備教育中にフルブライト委員会からドルで貰っていた。 一ドル=三百六十円である。日本は高度成長も所得倍増も始まっていず、東京→ニューヨークの片道旅費が私の新聞記者の年収まるごと使っても足りないほどだった。「全額給費」だからこそ行けた米国留学である。

カテゴリ: 社会
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執筆者プロフィール
徳岡孝夫(とくおかたかお) 1930年大阪府生れ。京都大学文学部卒。毎日新聞社に入り、大阪本社社会部、サンデー毎日、英文毎日記者を務める。ベトナム戦争中には東南アジア特派員。1985年、学芸部編集委員を最後に退社、フリーに。主著に『五衰の人―三島由紀夫私記―』(第10回新潮学芸賞受賞)、『妻の肖像』『「民主主義」を疑え!』。訳書に、A・トフラー『第三の波』、D・キーン『日本文学史』など。86年に菊池寛賞受賞。
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