「インフルエンザ」検体提供を拒み続けるインドネシアの愚

執筆者:井田純 2008年2月号
カテゴリ: 国際

[ジャカルタ発]「この状態で新型インフルエンザが発生し、世界中で犠牲者が出たら、インドネシア政府はどうするつもりなのか」。厳しい口調でこう語った在ジャカルタ外交関係者は、「今、パンデミック(大流行)が起きたら、彼女は国際刑事裁判所に人道上の罪で訴追されてもいいくらいだ」と続けた。非難の矛先は、WHO(世界保健機関)への鳥インフルエンザウイルス検体提供を拒む衛生当局のトップ、ファディラ・スパリ保健相に向けられたものだ。 世界的大流行が起きれば、最大七千四百万人が死亡する恐れもあるという新型インフルエンザ。最も懸念されているのは、インドネシアなどで蔓延する高病原性のH5N1型鳥インフルエンザウイルスが、ヒトからヒトへの感染力を持つ型に変異するケースだ。新型ウイルス発生を一刻も早くつかむため、WHOは各地で発生したウイルスをモニターしている。しかし、世界最多の鳥インフルエンザ感染者・死者を出すインドネシアが、提供を拒否し続けているのだ。 検体のウイルスからワクチンが製造されても、提供した国に何も見返りがないのはおかしい――インドネシア政府の言い分を要約するとこうなる。ユドヨノ大統領は、検体を提供するかわりに「ワクチンへのアクセスが確保されること」が必要との姿勢を示し、一部の途上国もこの主張に賛同する動きを見せている。本来、加盟国にはWHOへの検体提供が義務付けられているが、違反しても罰則規定はない。ウイルスを「人質」にしたインドネシアとWHOとの交渉はすでに一年になる。

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