中東―危機の震源を読む
中東―危機の震源を読む(39)

海底ケーブル切断が示した「帝国の通信ルート」の要衝

池内恵
執筆者:池内恵 2008年3月号
カテゴリ: 国際
エリア: 中東

[アレクサンドリア発]一月末、中国で大雪が降ったころ、中東の気象も大荒れだった。パレスチナでも雪が積もり、東地中海の南岸一帯は強い風と雨に晒された。エジプトのノーベル文学賞作家ナギーブ・マフフーズが、アレクサンドリアを舞台にした小説『ミラマール』でこの街を「雫の女王」と形容したように、冬季はエジプトにしては雨がちである。しかしそれにしても今年は例外的で、一月末は連日の激しい強風・雷雨に襲われた。滞在先のホテル前の広場でも、ケンタッキーフライドチキンの巨大な看板が落ち、電柱が折れてタクシーを直撃し、大破させた。 一月三十日、嵐の中を危険を避けながら外出し、数少ない無線LANのアクセスポイントで日本との連絡にメールを開こうとしていた。しかし一向に読み込まない。この日から数日間、エジプト全土でインターネット接続がほとんど不可能になった。目の前のアレクサンドリア港付近で二本の海底ケーブルが切断されていた(当初は船の碇が切ったとされ、エジプト政府はキプロス近海での地震が原因との見方も流すが真相は明らかでない)。 問題はエジプトに留まらない。サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)、そしてインドまでインターネット接続に多大な支障をきたした。コールセンター業が栄え、欧米企業のバックヤードと化したインドでの障害は国際的にも注目された。

この記事は役に立ちましたか?
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
この記事をSNSにシェアする
執筆者プロフィール
池内恵
池内恵 東京大学先端科学技術研究センター准教授。1973年生れ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
comment:0
icon
  • 記事の閲覧、コメントの投稿には、会員登録が必要になります。
フォーサイトのお申し込み
注目記事ランキング
  • 24時間
  • 1週間
  • f
  • 新着
  • 高評価
  • コメント数順