饗宴外交の舞台裏 (122)

「異例の夕食会」でわかった中国の「関係改善」意欲

執筆者:西川恵 2008年3月号
エリア: アジア

 福田康夫首相が十二月二十七日から四日間の日程で中国を訪問したが、親中派の福田首相を中国側は細心の心遣いと異例のもてなしで歓迎した。 福田首相と温家宝首相の前例のない共同記者会見。全国中継された北京大学での福田首相の講演。野球のユニフォームを着た両首相のキャッチボール……。日中蜜月ムードのなかで私の目を引いたのは、胡錦濤国家主席(共産党総書記)が主催した二十八日夜の夕食会だった。 当初、温首相が主催する予定だった夕食会は、中国側の意向で胡国家主席が主催することになった。 過去、中国のトップが日本の首相歓迎の夕食会をもった例として、一九八六年、中曽根康弘首相に対する胡耀邦総書記のもてなしがある。しかし国家主席主催の夕食会は皆無。九九年に小渕恵三首相に対して江沢民国家主席が昼食会をもっているが、夕食会ではない。「格」にこだわる中国は、儀式性が高い夕食会は相手と同格の首脳が主催する。

カテゴリ: 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
西川恵(にしかわめぐみ) 毎日新聞客員編集委員。日本交通文化協会常任理事。1947年長崎県生れ。テヘラン、パリ、ローマの各支局長、外信部長、専門編集委員を経て、2014年から客員編集委員。2009年、フランス国家功労勲章シュヴァリエ受章。著書に『皇室はなぜ世界で尊敬されるのか』(新潮新書)、『エリゼ宮の食卓』(新潮社、サントリー学芸賞)、『ワインと外交』(新潮新書)、『饗宴外交 ワインと料理で世界はまわる』(世界文化社)、『知られざる皇室外交』(角川書店)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、訳書に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店、共訳)などがある。
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