着々と「環境覇権」を引き寄せるEUのしたたかさ

執筆者:藤井良広 2008年3月号
エリア: ヨーロッパ

京都議定書の“有効期限”は二〇一二年まで。新たな国際合意作りの主導権を握るため、EUは二重三重に仕掛けを施している。「悪くはなかったよ」――。欧州で温暖化防止ビジネスを手がける友人がそう言って含み笑いをした。 この一月末、スイスで開かれた世界経済フォーラム(ダボス会議)で福田康夫首相が提言した、「ポスト京都」に向けた日本の政策に対する感想だ。福田演説の目玉は温暖化ガス削減の「国別総量目標」だが、肝心の日本の目標値は示さずじまい。「悪くはなかった」のはもちろんそのことではなく、途上国向けに百億ドル(約一兆円)を、環境・エネルギー分野の研究開発に三百億ドルをそれぞれ投じるとの約束を指す。「日本はカネを出してくれさえすればいい。ルールはオレたちEU(欧州連合)が作る」というわけか。

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