ブックハンティング・クラシックス
ブックハンティング・クラシックス(36)

初めて「世論」を正面から分析した若き俊英の懸念と楽観

執筆者:村田晃嗣 2008年3月号
カテゴリ: 国際 書評
エリア: 北米

『世論』Public Opinionウォルター・リップマン著/掛川トミ子訳岩波文庫(上・下巻) 1987年刊 ウォルター・リップマン(一八八九―一九七四年)は、二十世紀を代表するジャーナリストであり、『世論』はその代表作である。 本書が刊行されたのは一九二二年、著者が弱冠三十二歳の年であった。 レクイエム風に言えば、この年は大隈重信と山県有朋がいずれも八十三歳で、そして、森鴎外が六十歳で死去した年であり、明治国家建設の第一世代がほぼ退場しきった頃である。海外では、発明家のアレキサンダー・グラハム・ベルが七十五歳で、小説家のマルセル・プルーストが五十一歳で世を去っている。 だが、一九二二年の最大の世界史的出来事は、イタリアでムッソリーニが政権を獲得したことであろう。同年には、ワシントン海軍軍縮条約と九カ国条約がまとまり、第一次世界大戦後の極東新秩序が定まった。いわゆるワシントン体制である。だが、イタリア・ファシズムの台頭に見られるように、ヨーロッパではすでにベルサイユ体制が動揺しつつあったのである。のちには、リップマンと同い年のヒトラーがドイツで権力を掌握し(一九三三年)、ベルサイユ体制に引導を渡すことになる。

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