「海の常識」を忘れた海上自衛隊の失態

執筆者:山田吉彦 2008年4月号
カテゴリ: 外交・安全保障 金融
エリア: 日本

 三月二日午前、海上保安庁のヘリに乗った福田康夫首相が、千葉県勝浦市に降り立った。二月十九日、海上自衛隊のイージス艦「あたご」と衝突し、沈没したマグロ延縄漁船・清徳丸の乗組員・吉清治夫さん、哲大さん親子の親族に謝罪するためである。 今回のイージス艦と漁船の衝突事故では、防衛省が状況報告を小出しにし、その内容も二転三転したことから報道機関のみならず国民の不評をかった。 事故後、石破茂防衛大臣は自民党国防部会において「事故の二分前に緑の灯火が右前方に見え、その船が一分前になり急に右旋回して衝突した」と報告したが、これは、右側から航行する船に優先権がある海のルールに基づいてあたごの優先権を主張するためと考えられ、そのうえ、清徳丸が急旋回したため衝突したというのだ。これは、付近にいた漁船がうそだと証言している。また、海上幕僚監部・河野克俊防衛部長の記者会見は、笑みを浮かべながらの説明が顰蹙をかった。防衛省内にも「これでは国民が納得するわけはない。自衛隊を潰す気か」との非難の声が上がっていた。 一連の防衛省の対応に官邸は危機感を募らせた。民主党は石破防衛大臣の辞任を要求しはじめていた。官邸は、国会が混乱することで予算が不成立となり、国政に空洞を作ることを避けたかったのだ。

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