中小企業を救えず公共事業に救われる新銀行東京

執筆者:鷲尾香一 2008年4月号
エリア: 日本

 昨年四月、新銀行東京に入行した九人の新入社員たちは、一年も経たないうちに厳しい現実に直面した。就職先が開業から三年にして債務超過の危機に直面し、筆頭株主からの追加出資にすがる事態に追い込まれたのである。 新銀行の圧倒的な大株主は東京都。経営危機を目前にしての新規採用も罪つくりだが、都民全体に対する罪は輪をかけて大きい。都税を使った資本金一千億円(全体の八五%)を二〇〇七年九月中間期までにほぼ食い潰したうえ、さらに四百億円もの都税を注ぎ込もうというのだから。その追加出資にしても、国内外の金融機関に打診した出資交渉が不調に終わったための窮余の一策だ。 瀕死の新銀行からは民間出身の“プロ”も逃げ出している。信用金庫からの出向者、経営破綻した旧日本長期信用銀行、旧日本債券信用銀行、りそな銀行、足利銀行からの転職組はほぼいなくなった。蜜月関係にあったオリックスですら、昨年末にすべての人員を引き揚げた。その結果、銀行経営に当たるのは都から出向した職員。官業銀行の素人経営ここに極まれり――。 都が議会に追加出資への承認を求めた日に、新銀行は再建計画を発表した。会見の席上で津島隆一代表執行役は仁司泰正元代表執行役ら旧経営陣に対して、「刑事(告訴)を含めて責任追及を検討する」と語った。石原慎太郎知事も同日、「旧経営陣の非常識な運営で計画の達成が困難になった」と発言したが、都の関係者は「仁司さんの刑事告訴は考えられない。もしそうすれば、当然、知事の任命責任も問われることになる。旧経営陣に対する告訴の構えは、議会に追加出資を認めさせるためのポーズではないか」とみる。新銀行の関係者の見立ても同じだ。「行内では、『刑事告訴が本当にあるとすれば対象は仁司さんではなく融資担当だった丹治幹雄元執行役だろう』と見られている。だが、告訴すれば杜撰な内情を暴露される可能性があり、実際には踏み切れないだろう」。

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