頑なに“招待”を拒む鍛造部材メーカーの事情

執筆者:山田明彦 2008年4月号
カテゴリ: 国際 経済・ビジネス
エリア: 中国・台湾

 日本企業が競い合って中国など新興国への技術移転を進めている。供与方法はさまざまだ。三菱自動車工業のように「エンジン組立も部品調達も中国の民族系合弁会社に任せている」とほぼ完全移転した例もあれば、三菱重工業のように「船舶エンジン容器の製造と組立は中国に任せる」と周辺技術のみを移転し、中核技術は日本国内にとどめる例もある。 このように、新興国で事業展開するために何らかの技術供与が不可避になりつつあるなか、供与どころか「向こうの工場へ招待されても絶対に行かない」と接触そのものを拒絶する業種もある。大型プラントの圧力容器部材や船舶エンジン軸材、発電所用タービン軸材などを造る大型鍛造部材メーカーだ。 たとえば三菱重工や中国の民族系重電大手へタービン軸材を納める日本鋳鍛鋼には、第一重型機械集団、第二重型機械集団、上海重型機器といった民族系鍛造企業から「工場へ見学に来て欲しい」との誘いがしきりに寄せられるという。技術交流を手始めに、最先端技術を移転してもらおうと狙っているのだ。 この手の誘いに乗ると“接待漬け”にされることは想像に難くない。接待の見返りに「当社工場を見学したいと言い出されたら断り切れない」と日本鋳鍛鋼首脳は警戒する。超小型ビデオカメラ付きボールペンが出回るなど記録技術の進歩は止まらない。カメラによる撮影を禁じても、工場見学を許せばあらゆる手段を駆使して撮影するだろう。技術流出を未然に防ぐために交流そのものを断つ戦略は有効だ。業界最大手の日本製鋼所も、同様の理由で民族系企業の訪問要請を断るという。

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