インテリジェンス・ナウ
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北朝鮮・シリア核協力「動かぬ証拠」は「中程度の信頼度」の政治利用

春名幹男
執筆者:春名幹男 2008年6月号
カテゴリ: 国際
エリア: 中東 朝鮮半島

 二〇〇五年からの第二期ブッシュ米政権で、ネオコン(新保守主義者)高官は大方退陣したが、実は一人の筋金入りの大物が今も健在だ。エリオット・エイブラムズ国家安全保障問題担当次席補佐官(六〇)である。 四月二十四日「北朝鮮がシリアの核開発を支援」とのホワイトハウス声明の発表の裏で、彼はチェイニー副大統領とともに重要な役割を果たしたようだ。 この問題では同日午前から、「政府高官」と米中央情報局(CIA)高官二人が一組となり、上下両院の情報、外交、軍事の六委員会を回ったあと、記者団にも背景説明した。この「政府高官」がエイブラムズ氏だったといわれる。 各委員会での説明は秘密会で、記録も非公開だが、記者団との質疑応答は記録が国家情報長官(DNI)ホームページに掲載されている。これを読んで驚いた。日本の報道に全くない情報が記録されているからだ。日本では、例えば共同通信などは、CIAが公表した写真やビデオを「動かぬ証拠」と断じ、何の疑問も差し挟んでいない。 記者団にも見せたビデオは、北朝鮮の支援でシリア東部アル・キバルに建設されたとされる原子炉の説明から始まった。昨年九月六日、イスラエルがこの原子炉を爆撃、その直後、秘密が漏れるのを恐れたシリアが残骸を急いで片付けた様子などを伝えた。続いて、北朝鮮・寧辺の核燃料製造プラント責任者の写真を見せ、北朝鮮は二〇〇一年以降シリアに核開発で技術協力してきたと説明。結論として「原子炉は〇七年八月(の時点で)運転開始が近づいていた。原子炉には核兵器用プルトニウム生産能力があった」と断定した。

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執筆者プロフィール
春名幹男
春名幹男 1946年京都市生れ。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒業。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授を経て、現在、早稲田大学客員教授。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『スパイはなんでも知っている』(新潮社)などがある。
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