中東―危機の震源を読む (43)

「オバマ大統領」誕生が道徳上の力となる可能性

執筆者:池内恵 2008年7月号
エリア: 中東 北米

 米国民主党の大統領選挙候補者予備選挙で、バラク・オバマ上院議員がようやく勝利したようだ。もしオバマが本選挙も勝ち抜いた場合、米国の中東政策はどう変わるのだろうか。選挙戦略としての発言と、実際に大統領として実施しうる政策には隔たりがあるだろうから、現時点で有意義な予想はできない。 ここでは一部で議論になっていた「イスラーム教徒としてのオバマ」という問題について考えてみたい。選挙戦を通じて、共和党系・保守派の陣営からは、オバマの父親がムスリム(イスラーム教徒)であったという点が言及されてきた。インターネット上で、チェーンメールなどにより、「オバマは実は熱心なイスラーム教信者である」という噂が巡った。多くの保守的なアメリカ市民にとってはイスラーム教からはテロリズムがもっぱら連想されるという点を突いた中傷だろう。

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執筆者プロフィール
池内恵(いけうちさとし) 東京大学先端科学技術研究センター グローバルセキュリティ・宗教分野教授。1973年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より東京大学先端科学技術研究センター准教授、2018年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、『【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』 (新潮選書)、 本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』(同)などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
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